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予約商売は、「今日」ではなく「未来」で利益をつくる。

予約商売は、「今日」ではなく「未来」で利益をつくる。

10月7日
読了時間: 6分

更新日:10月9日

旅館は「予約商売」です。お客様が今日来館して、今日初めて売上が決まる商売ではありません。数週間後、数か月後のお客様を、今日の時点で獲得することができます。


この当たり前の仕組みには、旅館経営にとって非常に大きな意味があります。予約が入れば、未来の売上が見えます。同時に、未来の客数、仕事量、必要な人員、仕込みや発注の量も見えてきます。つまり予約は、単なる「お客様の受付情報」ではありません。未来の経営を先に見せてくれる情報です。


だから私は、予約商売の利益は宿泊当日だけでつくられるものではないと考えています。どれだけ早くお客様を獲得し、その情報を販売と現場の段取りに使えるか。売上とコストの両面から準備できるか。その積み重ねが、最終的に旅館へ残る利益を左右します。



予約が見えれば、未来の売上を変えられる


例えば、70室ある旅館の1か月先の土曜日を考えてみます。予約が10室しか入っていないのか、40室まで入っているのか、すでに65室まで入っているのか。この違いによって、今日すべき判断はまったく変わります。


65室まで入っているなら、残り5室を安く売る必要はないかもしれません。需要が強いと判断して料金を調整することもできます。反対に10室しか入っていないなら、まだ時間があるうちに商品を見直す、販売先を変える、見せ方を変える、価格を調整するなど、さまざまな手を打つことができます。


大切なのは、宿泊日当日に「今日は満室だった」「今日は空いていた」と結果を見ることではありません。その結果が見え始めた30日前、60日前、90日前に何を判断したかです。旅館の売上は、当日に突然できるものではありません。未来の日付に対して、一件ずつ予約を積み上げながらつくられていきます。


だから予約担当者は、単に入ってきた予約を処理する人ではありません。現在の予約状況を見て、次に何を売るのか、いくらで売るのか、どこへ在庫を出すのかを考える。予約を通じて未来の売上をつくる役割があります。



予約は、「未来の仕事量」まで教えてくれる


予約の価値は売上だけではありません。むしろ旅館経営では、コスト面でも非常に大きな意味があります。


1か月先に100人のお客様が来ることが分かっていれば、何食分の夕食と朝食が必要なのか、何室清掃するのか、食事会場をどのように使うのか、どれくらいのスタッフが必要なのか、送迎は必要なのかといったことを事前に考えられます。予約は「未来の売上表」であると同時に、「未来の仕事量」を教えてくれる情報なのです。


未来の仕事量が分かれば、未来のコストもある程度予測できます。必要な人数を考えてシフトを組む。料理数を予測して仕込みを考える。発注量を調整する。清掃の仕事量を予測する。忙しくなることが事前に分かっていれば、忙しくなってから慌てて対応する必要はありません。


反対に予約が少ない日も、事前に分かります。70室あるのに30日後の予約が10室しかない。それが今日分かっているなら、売上を増やすための時間がまだあります。同時に、必要以上の人員や仕入れを抱えないための判断もできます。ところが宿泊日の直前になって初めて「明日は10組しかいない」と気付けば、販売面でもコスト面でも打てる手は少なくなっています。シフトはすでに完成し、仕入れも進んでいるかもしれません。


つまり予約を早く獲得することは、単に安心して満室を待つためではありません。経営者に「判断する時間」をつくることでもあります。



売上とコストを、同じ予約から考える


旅館経営では、売上を考える人と現場のコストを考える人が別々になっていることがあります。予約担当者は販売を考え、現場は人員や料理を考える。しかし、本来この二つは同じ予約情報からつながっているはずです。


予約が増えれば売上は増えます。一方で、料理、清掃、接客などの仕事量も増えます。前の記事で書いたように、個人客中心になれば予約件数そのものも増えます。同じ100人でも、大きな団体2組と個人客50組では必要なオペレーションが違います。だから「何人泊まるか」だけではなく、「どのような予約が、いつ、どれくらい入っているのか」を見る必要があります。


売上面では、予約の進み方を見て料金や在庫、商品を判断する。コスト面では、その予約から必要な人員、仕込み、発注、清掃などを判断する。同じ未来の予約を、販売部門と現場の双方が使う。これができれば、売上を伸ばしながら無駄なコストを抑えることができます。


利益は「売上-費用」です。当たり前の式ですが、旅館の場合、その両方を事前にある程度予測できる材料が予約として存在しています。だからこそ、予約を経営情報として使わないのは非常にもったいないことだと思います。



満室になってからでは、もう遅い


「今日は満室です」。現場にとってはうれしい言葉です。しかし経営の視点では、その日になって満室だと分かったのでは遅いのです。売上の大部分はすでに決まっています。料金をもっと適正化できた可能性があっても、当日には変えられません。人員配置や仕込みも、すでにほとんど決まっています。


重要なのは、その満室がいつ見えたのかです。60日前から強い予約の動きが見えていたなら、早い段階で価格を判断できます。必要な人員も準備できます。逆に弱い日なら、時間を残した状態で販売策を打つことができます。


予約商売の大きな強みは、未来のお客様を先に知ることができる点です。一般の店舗では、明日の来店客数を正確に把握することは難しい場合があります。しかし予約商売なら、少なくとも予約済みのお客様については事前に把握できます。それにもかかわらず、当日になってから人数を見て動いているのであれば、予約という仕組みの価値を十分に経営へ生かせていません。


事前に獲得する。事前に見る。事前に判断する。そして事前に準備する。この「段取り」があるからこそ、旅館は売上を伸ばすだけでなく、無駄なコストを減らすことができます。



予約商売だからこそ、段取りで利益をつくる


予約を取る目的は、満室にすることだけではありません。未来のお客様を先に知る。未来の売上を知る。未来の仕事量を知る。そして、今日から準備する。そのための情報を得ることにも大きな価値があります。


売上の面では、需要を読み、料金を判断し、弱い日へ早く手を打つことができます。コストの面では、必要な人員や仕入れ、仕込み、清掃などを先に考えることができます。その両方をつなげるのが予約です。


旅館経営では、どうしても「何室売れたか」「いくら売れたか」という結果に目が向きます。しかし本当に重要なのは、その結果になる前に何をしていたかです。未来が見える商売だからこそ、未来に対して先に動く。そこに予約商売の強さがあります。


予約商売だからこそ、利益は「当日」ではなく「事前の段取り」でつくられる。私たちは、そう考えています。


旅館を、地域に残す。



金融機関・支援機関の皆様へ


取引先の旅館を見る際、現在の売上や稼働率だけでなく、「先々の予約がどこまで見えているか」を確認してみると、その旅館の経営力が見えてくることがあります。


数か月先の予約状況を把握しているか。その予約から売上見込みを立てているか。弱い日を早期に把握し、販売判断につなげているか。さらに、予約人数や予約件数を人員配置、仕込み、発注などの現場運営へつなげているか。


予約は、単なる宿泊者の管理情報ではありません。将来の売上と仕事量を先に把握できる経営情報です。この情報を使って事前に段取りを組める旅館と、宿泊日が近づいてから対応する旅館では、同じ売上でも最終的に残る利益が変わる可能性があります。


旅館名や企業名を伏せた段階でも構いません。売上だけでなく、予約から見える未来の経営まで一緒に考えさせていただければと思います。

 
 
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