赤字旅館をM&Aに持ち込む前に、確認してほしいこと
- 6 時間前
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旅館の赤字が続いている。
借入金の返済が厳しくなり、追加融資だけでは対応が難しくなってきた。
経営者から具体的な改善策もなかなか出てこない。
金融機関としても、
「そろそろ事業承継やM&Aを考えた方がいいのではないか」
という話になることがあります。
もちろん、それが正しい判断になるケースもあります。
しかし私たちは、旅館を経営する立場から、M&Aへ進む前に一度確認してほしいことがあります。
その旅館は「儲からない旅館」なのでしょうか。
それとも、
「儲かる経営ができていない旅館」なのでしょうか。
この二つは、似ているようで大きく違います。
赤字という「結果」だけでは、再生できるか分からない
決算書を見れば、その会社が赤字であることは分かります。
しかし、
なぜ赤字になっているのか。
ここまで分解していくと、旅館によって事情は大きく異なります。
例えば、
客室が埋まっていない。
宿泊単価が低すぎる。
料理原価が高い。
人員配置が売上規模に合っていない。
OTAへの依存度が高く、販売手数料が膨らんでいる。
利益の出ないプランを長年販売し続けている。
設備投資や修繕負担が大きい。
借入金の返済負担が現在の収益力に合っていない。
同じ「赤字旅館」でも、原因はまったく違います。
そして、その原因によって、再生できる可能性も変わります。
「稼働率が低い=集客不足」とは限らない
旅館の業績が悪いと、
「もっとお客様を増やさなければ」
という話になりがちです。
しかし、私たちは必ずしもそうだとは考えていません。
例えば、安い料金で客室を埋めても、料理原価や人件費、OTA手数料などを差し引いた結果、ほとんど利益が残らないことがあります。むしろ宿泊者が増えたことで、現場の負担だけが大きくなるケースさえあります。
重要なのは、
「何人泊まったか」ではなく、「その宿泊によっていくら利益が残ったのか」
を見ることです。
売上を増やすことと、利益を増やすことは同じではありません。
料金を変えるだけで、見え方が変わる旅館もある
旅館には、長年同じ料金体系を続けている施設もあります。
平日も休日も料金差が小さい。
繁忙期でも十分に料金を上げていない。
逆に、閑散日は料金を下げるだけで、売り方そのものを変えていない。
客室タイプごとの価値が料金に反映されていない。
こうした状態では、需要がある日にも十分な利益を確保できません。
年間を通して見ると、
「お客様が来ないから赤字」なのではなく、
「需要に合った価格で販売できていないから赤字」
というケースもあります。
旅館再生では、売上を増やす前に「現在の売上をどう作っているのか」を見ることが重要です。
人件費が高いからといって、人を減らせばいいわけではない
赤字企業の改善では、人件費削減が検討されることがあります。
しかし旅館の場合、単純に人数を減らせばよいとは限りません。
フロント。
清掃。
調理。
配膳。
予約。
設備管理。
旅館は、人の仕事によって成り立っている部分が非常に大きい事業です。
必要な人員まで削減すれば、サービス品質が落ち、残った従業員が疲弊し、さらに退職者が増える可能性があります。
見るべきなのは、
「人が多いか少ないか」ではなく、
「現在の売上と営業形態に合った人員配置になっているか」
です。
営業時間、休館日、食事提供方法、業務内容そのものを変えることで、人を切らずに生産性を改善できることもあります。
旅館の中に「利益を生んでいる部分」が残っていないか
旅館全体では赤字でも、すべての商品や営業日が赤字とは限りません。
例えば、
週末は十分利益が出ている。
特定の客室タイプは高単価で売れている。
特定のプランは利益率が高い。
団体より個人客の方が収益性が高い。
繁忙期には十分なキャッシュを生み出せている。
こうした部分が残っているのであれば、
利益を生んでいる部分を伸ばし、利益を失っている部分を見直す
という方法があります。
会社全体の数字だけでは、この構造は見えにくいものです。
だからこそ、旅館再生では決算書だけでなく、実際の営業内容まで見る必要があります。
それでも再生できない旅館はあります
もちろん、すべての旅館が再生できるわけではありません。
施設への大規模投資が必要で、それを回収できる見込みがない。
市場そのものが大きく縮小している。
債務負担があまりにも大きい。
経営者自身に事業継続の意思がない。
さまざまな事情があります。
その場合には、M&Aや事業譲渡、場合によっては廃業という判断が必要になります。
私たちが伝えたいのは、
「M&Aをしない方がいい」ということではありません。
そうではなく、
M&Aを決める前に、その旅館の「再生可能性」を一度分解して見てほしい。
ということです。
「売れるか」の前に、「残せるか」を考える
M&Aでは当然、
「いくらで売れるのか」
「買い手がいるのか」
という視点が重要になります。
しかし、その前にもう一つ、
「この旅館は、経営の仕組みを変えれば残せないだろうか」
という問いがあってもいいと思います。
売り方。
料金。
料理。
人員配置。
営業日。
販売チャネル。
コスト。
そして金融条件。
一つずつ分解してみる。
その結果、
「やはりM&Aが最善だ」
となるのであれば、それも一つの答えです。
しかし、
「まだやれることがある」
と分かる旅館もあるはずです。
金融機関・支援機関の皆様へ
業績不振の旅館について、
「改善計画を作ったが、なかなか数字が改善しない」
「経営者だけでは具体的な改善策が出てこない」
「M&Aを検討しているが、本当にそれしかないのか判断できない」
そのような段階で構いません。
正式な再生案件になる前でも、旅館名や企業名を伏せた状態でも、お話を伺います。
M&Aに持ち込む前に、その旅館にまだ「残せる可能性」があるのか、一緒に考えてみませんか。

