top of page

赤字旅館をM&Aに持ち込む前に、確認してほしいこと

  • 6 時間前
  • 読了時間: 5分

旅館の赤字が続いている。

借入金の返済が厳しくなり、追加融資だけでは対応が難しくなってきた。

経営者から具体的な改善策もなかなか出てこない。


金融機関としても、

「そろそろ事業承継やM&Aを考えた方がいいのではないか」

という話になることがあります。


もちろん、それが正しい判断になるケースもあります。

しかし私たちは、旅館を経営する立場から、M&Aへ進む前に一度確認してほしいことがあります。


その旅館は「儲からない旅館」なのでしょうか。


それとも、

「儲かる経営ができていない旅館」なのでしょうか。


この二つは、似ているようで大きく違います。



赤字という「結果」だけでは、再生できるか分からない


決算書を見れば、その会社が赤字であることは分かります。


しかし、

なぜ赤字になっているのか。

ここまで分解していくと、旅館によって事情は大きく異なります。


例えば、

客室が埋まっていない。

宿泊単価が低すぎる。

料理原価が高い。

人員配置が売上規模に合っていない。

OTAへの依存度が高く、販売手数料が膨らんでいる。

利益の出ないプランを長年販売し続けている。

設備投資や修繕負担が大きい。

借入金の返済負担が現在の収益力に合っていない。


同じ「赤字旅館」でも、原因はまったく違います。

そして、その原因によって、再生できる可能性も変わります。



「稼働率が低い=集客不足」とは限らない


旅館の業績が悪いと、

「もっとお客様を増やさなければ」

という話になりがちです。


しかし、私たちは必ずしもそうだとは考えていません。


例えば、安い料金で客室を埋めても、料理原価や人件費、OTA手数料などを差し引いた結果、ほとんど利益が残らないことがあります。むしろ宿泊者が増えたことで、現場の負担だけが大きくなるケースさえあります。


重要なのは、

「何人泊まったか」ではなく、「その宿泊によっていくら利益が残ったのか」

を見ることです。


売上を増やすことと、利益を増やすことは同じではありません。



料金を変えるだけで、見え方が変わる旅館もある


旅館には、長年同じ料金体系を続けている施設もあります。


平日も休日も料金差が小さい。

繁忙期でも十分に料金を上げていない。

逆に、閑散日は料金を下げるだけで、売り方そのものを変えていない。

客室タイプごとの価値が料金に反映されていない。


こうした状態では、需要がある日にも十分な利益を確保できません。


年間を通して見ると、

「お客様が来ないから赤字」なのではなく、

「需要に合った価格で販売できていないから赤字」

というケースもあります。


旅館再生では、売上を増やす前に「現在の売上をどう作っているのか」を見ることが重要です。



人件費が高いからといって、人を減らせばいいわけではない


赤字企業の改善では、人件費削減が検討されることがあります。

しかし旅館の場合、単純に人数を減らせばよいとは限りません。


フロント。

清掃。

調理。

配膳。

予約。

設備管理。


旅館は、人の仕事によって成り立っている部分が非常に大きい事業です。

必要な人員まで削減すれば、サービス品質が落ち、残った従業員が疲弊し、さらに退職者が増える可能性があります。


見るべきなのは、

「人が多いか少ないか」ではなく、

「現在の売上と営業形態に合った人員配置になっているか」

です。


営業時間、休館日、食事提供方法、業務内容そのものを変えることで、人を切らずに生産性を改善できることもあります。



旅館の中に「利益を生んでいる部分」が残っていないか


旅館全体では赤字でも、すべての商品や営業日が赤字とは限りません。


例えば、

週末は十分利益が出ている。

特定の客室タイプは高単価で売れている。

特定のプランは利益率が高い。

団体より個人客の方が収益性が高い。

繁忙期には十分なキャッシュを生み出せている。


こうした部分が残っているのであれば、

利益を生んでいる部分を伸ばし、利益を失っている部分を見直す

という方法があります。


会社全体の数字だけでは、この構造は見えにくいものです。

だからこそ、旅館再生では決算書だけでなく、実際の営業内容まで見る必要があります。



それでも再生できない旅館はあります


もちろん、すべての旅館が再生できるわけではありません。


施設への大規模投資が必要で、それを回収できる見込みがない。

市場そのものが大きく縮小している。

債務負担があまりにも大きい。

経営者自身に事業継続の意思がない。

さまざまな事情があります。


その場合には、M&Aや事業譲渡、場合によっては廃業という判断が必要になります。


私たちが伝えたいのは、

「M&Aをしない方がいい」ということではありません。


そうではなく、

M&Aを決める前に、その旅館の「再生可能性」を一度分解して見てほしい。

ということです。



「売れるか」の前に、「残せるか」を考える


M&Aでは当然、

「いくらで売れるのか」

「買い手がいるのか」

という視点が重要になります。


しかし、その前にもう一つ、

「この旅館は、経営の仕組みを変えれば残せないだろうか」

という問いがあってもいいと思います。


売り方。

料金。

料理。

人員配置。

営業日。

販売チャネル。

コスト。

そして金融条件。


一つずつ分解してみる。


その結果、

「やはりM&Aが最善だ」

となるのであれば、それも一つの答えです。


しかし、

「まだやれることがある」

と分かる旅館もあるはずです。



金融機関・支援機関の皆様へ


業績不振の旅館について、

「改善計画を作ったが、なかなか数字が改善しない」

「経営者だけでは具体的な改善策が出てこない」

「M&Aを検討しているが、本当にそれしかないのか判断できない」


そのような段階で構いません。

正式な再生案件になる前でも、旅館名や企業名を伏せた状態でも、お話を伺います。

M&Aに持ち込む前に、その旅館にまだ「残せる可能性」があるのか、一緒に考えてみませんか。



 
 
bottom of page