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OTAに頼らなければ、旅館は集客できないのか。

OTAに頼らなければ、旅館は集客できないのか。

9月30日
読了時間: 6分

「OTAへの依存度を下げたい。」旅館経営者から、よく聞く言葉です。しかし同時に、「OTAを弱めたら予約が入らなくなるのではないか」という不安もあります。個人客が中心となった現在の宿泊市場で、OTAは欠かすことのできない販売チャネルです。お客様はOTAで宿を探し、写真を見て、口コミを読み、料金を比較し、そのまま予約します。


だから、OTAを使うこと自体が問題なのではありません。問題は、売上を増やそうとすればするほど、販売手数料も同じように増え続ける構造になっていないかということです。集客力を高めたい。露出を増やしたい。予約をもっと取りたい。その結果、販売コストも膨らむ。それでも売上が伸びているうちは問題が見えにくいのですが、旅館経営で本当に見るべきなのは「いくら売ったか」だけではなく、「その売上をつくるためにいくら使ったか」だと思っています。


ホテルひるがみの森の年間販売手数料率は8.9%です。それでも集客を犠牲にしているわけではありません。じゃらんnetの売上ランキングでも長野県内上位に掲載される販売実績をつくっています。売れている。でも、依存しすぎていない。この二つは両立できます。



OTAは必要。でも、依存する必要はない


団体旅行中心の時代であれば、旅行会社や団体営業によって一度に多くの客室を埋めることができました。しかし現在は、一組一組の個人予約を積み上げる力が重要です。その入口としてOTAが果たす役割は非常に大きく、OTAを否定して個人集客を考えることは現実的ではありません。


一方で、「個人客を取る=OTAから取る」とだけ考えてしまうと、販売構造は次第にOTAへ寄っていきます。予約が欲しい日ほど施策を強くする。売上を増やすためにさらにOTAで販売する。すると、売上は増えても販売手数料も増えていきます。これが長期間続けば、OTAが単なる販売チャネルではなく、「そこがなければ売上を維持できない存在」になっていきます。


私は、ここを分けて考える必要があると思っています。OTAは使う。しかし、OTAがなければ売れない旅館にはしない。OTAで新しいお客様と出会うことも大切です。その一方で、その旅館自身にもお客様を呼ぶ力を蓄積していく。この二つを同時に進めることが、これからの旅館の販売には必要です。



8.9%でも、売上はつくれる


ホテルひるがみの森では、年間売上に対する販売手数料率は8.9%です。この数字だけを見ると、「OTAであまり売っていないのではないか」と思われるかもしれません。しかし実際にはそうではありません。じゃらんnetの長野県旅館売上ランキングにも上位施設として掲載され、エリアでも上位を争うところまで販売力を高めてきました。


大切なのは、販売手数料率を低くすること自体を目的にしないことです。仮に手数料を減らした結果、売上まで大きく落ちたのであれば意味がありません。反対に、販売コストをかけることで、それ以上の利益を生み出せるのであれば、そのコストには意味があります。見るべきなのは、手数料の高い・安いだけではなく、その販売費によってどれだけの売上と利益を生み出しているかです。


例えば売上1億円に対して販売手数料率が8.9%なら890万円です。15%なら1,500万円、20%なら2,000万円、25%なら2,500万円になります。


8.9%と20%では、売上1億円あたり1,110万円の差になります。旅館の利益率や返済原資を考えれば、決して小さな金額ではありません。だからこそ、売上を伸ばすことと同時に、「その売上をどのくらいの販売コストでつくっているのか」を経営指標として見る必要があります。



なぜ8.9%でできるのか


「なぜ、そんなことができるのですか。」「何をすればOTAへの依存を下げられるのですか。」これは、よく聞かれる質問です。


今回の記事では、具体的な方法については書きません。なぜなら、一つのテクニックを導入すれば解決する話ではないからです。自社サイトを強くすればいい、リピーターを増やせばいい、OTAの在庫を減らせばいい、といった一つの施策だけで8.9%になっているわけではありません。


商品をどうつくるか。誰に売るか。価格をどう設定するか。いつ在庫を出すか。OTAをどのように使うか。自社でどのように予約を受けるか。一度来ていただいたお客様とどう関係をつくるか。そして、予約の入り方を見ながら毎日どう判断するか。これらはすべてつながっています。


前の記事でも書いたように、旅館の販売は単なる予約受付ではありません。未来の売上をつくる仕事です。だからOTA依存の問題も、「手数料を下げる方法」という一点だけで考えるのではなく、旅館全体の販売構造として考える必要があります。



売上ではなく、「残る売上」を考える


金融機関から旅館を見る場合にも、ここは重要だと思います。売上が3億円ある旅館と聞けば、まずその売上規模に目が向きます。しかし、その3億円をつくるためにどれだけの販売コストを使っているのかによって、最終的に残る利益やキャッシュは変わります。


これは、これまで書いてきた「売上があることと返済原資があることは違う」という話にもつながります。旅館再生で必要なのは、単純に売上を元へ戻すことだけではありません。同じ売上でも、以前より利益が残る構造に変えることです。販売手数料は、その構造を考えるうえで非常に大きな要素の一つです。


そして重要なのは、OTAを敵にしないことです。OTAは個人客を獲得するための強力な販売チャネルです。だからこそ上手に使う。使われるのではなく、使う。OTAで売る。でもOTAだけに頼らない。売上を増やす。でも売上と同じ速度で販売コストまで増やさない。その状態をつくることが、旅館の収益構造を強くします。



OTAを使う旅館から、使いこなす旅館へ


ホテルひるがみの森では、年間販売手数料率8.9%という水準で、それでも長野県内上位に入る販売実績をつくっています。これは「OTAを使わない方がいい」という話ではありません。むしろ、OTAを重要な販売チャネルとして活用しながら、そこだけに依存しない販売構造をつくれるという実例です。


では、何を変えればいいのか。方法はあります。しかし、その答えは一つではありません。旅館の規模、立地、客層、商品、価格、既存顧客、販売経路によって、やるべきことは変わります。だからこそ、その旅館ごとに販売の構造そのものを見る必要があります。


「集客するためには、高い販売手数料を払い続けるしかない」。その前提は、一度疑ってみてもいいのではないでしょうか。OTAを使わない旅館を目指すのではない。OTAがなければ売れない旅館にしない。


売上をつくり、そこから利益を残し、返済原資をつくる。そのための販売構造まで変えることも、旅館再生の一部だと私たちは考えています。


旅館を、地域に残す。 株式会社 旅と館



金融機関・支援機関の皆様へ


取引先の旅館について、売上は回復しているのに利益が思ったほど残らない、個人客比率の上昇とともに販売手数料が増えている、OTAへの依存度が高く販売構造を変えられない、といった状況があれば、売上高だけではなく「その売上をいくらの販売コストでつくっているのか」という視点から見ることで、改善余地が見えてくる場合があります。


OTAは必要です。しかし、OTAへの依存度と集客力は必ずしも同じものではありません。販売力を維持しながら販売コストを適正化できる余地がないか。正式な再生案件になる前でも、旅館名や企業名を伏せた段階でも構いません。販売構造から旅館の収益性を一緒に考えさせていただければと思います。

 
 
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