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旅館再生は、「手遅れになる前」が一番やりやすい

9月4日
読了時間: 6分

旅館の経営が厳しくなったとき、すぐに経営が行き詰まるわけではありません。


最初は、

「今年は少し売上が悪かった」

「原材料費が上がった」

「人件費が増えた」

「設備修繕が重なった」

そんなところから始まることもあります。


預金残高がある。

金融機関への返済もできている。

給与も支払えている。

その段階では、経営者自身も、「まだ何とかなる」と考えます。


ところが、赤字が続く。

借入金が増える。

資金繰りが厳しくなる。


そして、いよいよ資金が足りなくなったところで、

「旅館を何とかできないだろうか」

という話になります。


しかし旅館再生の現場から見ると、ここには大きな問題があります。

再生は、経営が悪くなればなるほど難しくなるからです。



再生に必要なのは「お金」だけではなく「時間」


旅館の経営は、今日何かを変えたからといって、明日から利益が出るものではありません。


例えば、料金を見直す。

販売プランを変える。

OTAの販売方法を変える。

料理内容を見直す。

勤務体制を変える。

休館日を設定する。

仕入れを見直す。


こうした改善を行っても、その効果が数字に表れるまでには時間がかかります。

特に宿泊業は、数か月先の予約を販売しています。

今日販売方法を変えても、その成果が実際の宿泊売上として表れるのは数か月後です。


つまり再生には、

改善するための時間

と、

その結果が出るまで耐えるための資金

の両方が必要です。



資金がなくなってからでは、できることが一気に減る


例えば、まだ半年分の資金余力がある旅館なら、

料金体系を変える。

商品構成を見直す。

販売チャネルを整理する。

人員配置を変更する。

設備の優先順位を決める。

といった改善を順番に行うことができます。


しかし、

「来月の給与をどう払うか」

という状態になると、話は変わります。


経営者も金融機関も、

長期的に何を変えるかではなく、来月をどう乗り切るか

を考えなければならなくなります。


すると、本来やるべき経営改善よりも資金繰り対策が優先されます。

そして時間がなくなるほど、選択肢も少なくなっていきます。



売上があるうちに変える方が、再生しやすい


旅館再生というと、

「赤字を黒字にする」

というイメージが強いかもしれません。


しかし本当は、

まだお客様が来ているうちに経営を変える方が、はるかに再生しやすい

と私たちは考えています。


年間何万人もの宿泊客がいる。

週末は客室が埋まる。

繁忙期には満室になる。

リピーターもいる。

地域での知名度もある。

それでも利益が残らない。


この段階であれば、「売れていない」のではなく、

「売上を利益に変える仕組みに問題がある」可能性があります。

これは、改善できる余地がまだ大きい状態です。



赤字になる前から、再生は始められる


私たちは「旅館再生」という言葉を使っていますが、必ずしも倒産寸前の旅館だけを対象にしているわけではありません。


むしろ、

売上はある。

返済もできている。

しかし利益が少ない。

設備投資の資金が残らない。

借入金がなかなか減らない。

経営者が将来に不安を感じている。

こういう段階から経営を見直す方が、本来は理想です。


例えば、

年間売上3億円、営業利益100万円の旅館を、

年間売上3億3,000万円、営業利益2,000万円の旅館へ変える。


必ずしも売上を倍にする必要はありません。

単価、原価、人員配置、営業日、販売方法などを少しずつ変えるだけでも、最終的に残る利益は大きく変わる可能性があります。


再生とは、倒れた会社を起こすことだけではありません。

倒れる前に、経営の形を変えることも再生だと思います。



金融機関は、経営悪化の兆候を早く知ることができる


そして、ここで地域金融機関の役割が重要になります。

金融機関は、旅館の経営状態を比較的早い段階から見ることができます。


預金残高が減ってきた。

短期借入が増えた。

返済条件の相談が増えた。

利益率が低下している。

設備投資を先送りしている。


こうした変化は、

経営が完全に行き詰まる前のサイン

かもしれません。


その段階で、「もう少し様子を見ましょう」だけではなく、

「一度、旅館経営そのものを見直してみませんか」

という選択肢があってもいいのではないでしょうか。



経営改善計画を作るだけでは、旅館は変わらない


金融支援の場面では、経営改善計画を作ることがあります。


売上を○%増やす。

原価率を○%下げる。

人件費を○%削減する。

数値目標を決めることは必要です。


しかし現場では、

「では、明日から何を変えるのか」

まで落とし込まなければ数字は変わりません。


宿泊料金をいくらにするのか。

どのプランをやめるのか。

どの日に料金を上げるのか。

どの業務を減らすのか。

どの時間帯の人員配置を変えるのか。

料理をどう変えるのか。

どの販売チャネルを強化するのか。


経営改善計画と、実際の旅館運営の間をつなぐ必要があります。

私たちが旅館再生で重要だと考えているのは、まさにこの部分です。



「まだ大丈夫」の時に相談してほしい


経営者にとって、

「再生を考えましょう」

と言われることには抵抗があるかもしれません。


まだ倒産していない。

返済もできている。

だから、「うちはそこまで悪くない」と思うのは自然なことです。


しかし、

再生を考えることと、会社が危ないことは同じではありません。


むしろ、まだ余力があるときだからこそ、選べる方法があります。

試せることがあります。失敗しても修正する時間があります。

そして何より、

経営者自身が選択できる余地があります。



旅館再生で一番失いたくないものは、「選択肢」


経営が悪化すると、お金がなくなります。

しかし同時に、もう一つ失っていくものがあります。


それが、

選択肢です。


まだ余力があるときなら、

自力再生する。

金融支援を受ける。

一部事業を見直す。

経営者を支援する。

第三者と提携する。

M&Aを検討する。

さまざまな方法を比較できます。


ところが資金が尽きれば、「今すぐ資金を入れてくれるところ」という条件が最優先になります。


その時点では、

地域に残すのか。

雇用をどうするのか。

取引先をどうするのか。

ということまで考える余裕がなくなることもあります。


だからこそ、

旅館再生は「最後の手段」ではなく、選択肢が残っているうちに考えるもの

であってほしいと思います。



金融機関・支援機関の皆様へ


取引先の旅館について、


「まだ返済はできているが、利益がほとんど残っていない」

「ここ数年、借入金が減っていない」

「経営改善計画を作ったが、実際の経営が変わっていない」

「今すぐではないが、このままでは数年後が心配」


そんな段階でも構いません。

むしろ私たちは、その段階だからこそ一緒に考えられることが多いと思っています。


正式な再生案件になる前でも、旅館名や企業名を伏せた状態でも構いません。

「まだ大丈夫」のうちに、その旅館の5年後を一度考えてみませんか。



 
 
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